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「雪国」

 川端康成の「雪国」は二度映画化されていて、昨日ラピュタ阿佐ヶ谷で観たのは1965年に松竹作品の方です。監督は大庭秀雄、主演は岩下志麻と木村功。春先に越後の温泉街を訪れた文人の島村(木村功)は芸者駒子(岩下志麻)と関係を持ち、駒子と街の雰囲気が好きになり、1年に1度通うようになる。その間に駒子の境遇はどんどん変わっていき、世間には戦争の影が忍び寄る。
 年に1度しか訪れない男を思い続ける芸者なんているのだろうかと、考えながら観ていた。映画は突然火事が起こり、駒子の妹分(加賀まりこ)がけがを負い、駒子に「あんたなんか東京に帰ればいいんだわ!」と言われた島村が乗る東京行きの列車のシーンで終わる。
 音楽は山本直純。この人は昔テレビのCMで「大きいことは良いことだ」とやっていたり、面白おじさんキャラでクイズ番組に出ていたりしていた。こんな哀切なテーマを音楽を作曲していたとは思わなかった。
 撮影は成島東一郎。私はこの人と何度か会ったことがある。以前書いた「阿佐ヶ谷映画村」に、いくつかの木下恵介作品のカメラマンとしてゲストで呼ばれたのである。また監督作品の「青幻記」の上映もした。雑談も交わしていて、そのときの写真もある。私は当時三十代で日本映画をこまめに観ていくということをしていなかった。吉村公三郎や今井正、斎藤耕一監督、カメラマンの今井博さんなど、当時は引退されてはいたが、立派な仕事を残された方々。何か聞こうと思えば話ができる雰囲気の中で私は何一つ聞こうとしなかった。本当にもったいないことをしたと今思う。また、日本映画を支えてきた人たちを接待する側として失礼なことばかりしたと思う。





by hfmpk117 | 2017-11-26 11:13 | 映画  

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